
あなたの薬局では、従業員がモチベーション高く働いていますでしょうか、もしくは効率的な組織運営はできていますでしょうか。もし何かしら組織運営に課題を感じている薬局さんは、一度組織作りを見直してみてもいいかもしれません。
理想的な組織の姿は自社の外部・内部環境で変わりますが、基本的には組織に必要な要素である、目的(経営理念)・方法(経営戦略)・役割(組織構造、人事戦略)が「明確」「連動」「浸透」していることが大事です。
この記事では、組織作り・組織化に必要なことや大事なポイント、そのためのステップをできるだけ簡単に解説していきます。
組織化が行き詰っている薬局さんはもちろん、これから組織作りを行っていく薬局さんもぜひ参考にしてみてください。
1、組織化に必要なこと
(1)組織とは
組織づくりや組織化を理解していくために、まず組織とは何かを整理しましょう。「経営学の神様」「マネジメントの開発者」と言われるピーター・ドラッカーはこう定義しています。

つまり、企業の目的は社会への価値提供であり、社員の成長や自己実現、満足度ではありません。企業は、代表者が発起人になり社会に価値を提供し対価を得ることを目的に設立されます。
一人(個人)では社会に提供できる価値は小さくても、組織であれば、社会に提供する価値を大きくすることができ、そのために組織は形成されます。

(2)組織化に必要な要素
では、組織には何が必要なのでしょうか。
組織のフェーズや規模による部分もありますが、基本的には下図のように目的(経営理念)・方法(経営戦略)・役割(組織構造、人事戦略)が必要です。一つ一つ解説していきます。

①経営理念(目的)
経営理念とは、前述にあった「組織をつくる」根幹に当たる部分です。社会にどのような価値を提供するのかという、組織をつくる目的と言えます。この部分はさらに「経営理念」「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」の2つに大別できます。

MVVとは経営理念をさらに具体化したものです。会社によって多少位置づけが違いますが、基本的には下図のような関係性があります。理解しやすいよう各関係性とともに、リクナビやゼクシィで有名なリクルートの経営理念・MVVも示しておきます。

このように経営理念およびMVVは、社会にどのような価値を提供するのかという、組織をつくる目的を定める要素です。
②経営戦略(方法)
経営理念で決めた組織の目的を、どのような方法で達成していくのかを具体化したのが経営戦略です。 この部分も「経営戦略」「経営計画」の2つに大別することができます。

経営戦略とは中長期的なゴールと、そのための経営資源の運用方法です。例えば前述のリクルートについて言えば、経営戦略の一つとして、人材領域で世界No1になるため、積極的にM&Aを行っています。
一番有名な買収先は、あなたもよくテレビCMで見るIndeed(アメリカ)でしょう。カネ(資金)という経営資源を運用して、海外市場を獲得したわけです。

また、経営計画とは経営戦略を達成していくための、期間ごとの具体的なプロセス・計画です。よくリクルートなどの大企業が3年計画とか5年計画を発表、などとニュースで聞いたことがあると思います。
③組織構造(役割)
経営戦略で目的(経営理念)を達成するための方法が決まれば、そのための体制や各部署の役割を決めるのが組織構造です。 「組織(構造)は戦略に従う」というチャンドラー(経営史の研究家である米ハーバード大学教授)の有名な言葉もあります。

例えば、今後、在宅患者獲得への注力を経営戦略の一つに掲げた場合、在宅の専門部署を立ち上げるのか、一部の管薬たちに営業を兼務させるのか、組織体制(構造)を変化させる必要が出てきます。
このフェーズで具体的にやることは、最適な組織体制(構造)を考えることに加え、組織図を作ったり、部署や役職の役割(定義)を決めていきます。
④人事戦略(役割)
組織体制(構造)や各部署の役割が決まると、今度は各部署を構成する個人の役割について考えるのが人事戦略です。
各個人の役割や各人が最大限の能力を発揮できる制度を考え、人員不足であれば採用活動を行い、さらに、従業員に必要な研修を実施します。 ですので、人事戦略は大きく採用・教育・評価・報酬に分けられます。

人事戦略の中でも、評価・報酬といった既存社員のモチベーションに大きく関与する部分が人事制度です。 人事制度は、評価・報酬のルールについて言語化・可視化した制度で、具体的には等級制度・評価制度・報酬制度の大きく3つに分かれます。

等級制度とは職種(薬剤師・医療事務など)ごとにグレード(等級)や要件を定めることです。そして評価制度とは、店舗売上・個人能力の成長で各薬剤師を評価するなど、等級ごとの評価方法を定めることです。最後の報酬制度は、基本給は変わらないけど評価結果でボーナス(賞与)が大きく変わるなど、報酬の算出ルールを定めることです。
これら等級制度・評価制度・報酬制度からなる人事制度は、人事戦略でもとくに重要な内容になります。
以上、ここまで、組織化に必要な要素である目的(経営理念)・方法(経営戦略)・役割(組織構造、人事戦略)について解説してきました。
2、組織化のポイント
ここからは実際に組織化を進める上でのポイントを解説していきます。まず組織の変化を大きい視点で理解しましょう。
参考になる考え方として下図のような「組織のライフサイクルモデル」があり、このモデルでは大きく4つの成長段階に分けられています。

【起業者段階】数名~50名規模。創業すぐのベンチャー企業や少人数の組織であり、創業者のリーダーシップが大きく影響
【共同体段階】50名以上~100名規模。創業者のリーダーシップだけでは組織が機能しなくなるものの、ルールや規則の整備はまだ部分的
【公式化段階】100名以上~1000名規模。組織が分業化やピラミッド型のように階層化され、ルールや規則も整備されることで官僚化しやすい
【精巧化段階】1000名以上。経営資源が豊富だが、組織の硬直化などのマイナス面も表面化するため組織の各部門に権限移譲などを行い対策
組織は変化していくもので、各成長段階で生じやすい課題があります。自社の現段階を大きい視点で捉えられれば、組織化を進める上での課題やその原因・対策も考えやすくなるはずです。
大事なことは、組織化に必要な要素である目的(経営理念)・方法(経営戦略)・役割(組織構造、人事戦略)を「明確にする」「連動させる」「理解・浸透させる」の3つです。順番に解説していきます。
(1)目的・方法・役割を明確にする
これは主に、前述のモデルの起業者段階~共同体段階で必要なポイントです。組織化に必要な要素がすべて定義され明確になっているかということです。

例えば共同体段階で50~100名近くまで組織が拡大してくると、それまで行っていた店舗ごとの採用では採用基準に大きなバラつきが生じてしまうため、採用基準の統一など人事戦略の策定が必要になってきます。
自社組織の段階に応じて、不足している組織化の要素はないか、修正すべき要素はないか見直してみましょう。
(2)目的・方法・役割を連動させる
目的・方法・役割を明確にする際、注意したいポイントが各要素を連動させることです。
解説してきた通り、経営理念で決めた組織の目的を、どのような方法で達成していくのか具体化したのが経営戦略であり、そのための体制や各部署の役割を決めるのが組織構造・人事戦略です。

当たり前のように聞こえますが、すべての要素がちゃんと連動している会社はむしろ少ないです。特に、経営理念と経営戦略は連動しているけど、組織構造や人事戦略まで連動していないケースが多いと思います。
積極的な在宅獲得を戦略の一つに据えたけど、在宅獲得のための営業成果を評価する制度になっていない、そもそもそういう人材を獲得できる採用戦略がないなどです。
これでは、せっかく目的・方法を定めても個人のモチベーションが低かったり、もしくはその役割の個人がいないために役割が果たされず、バラバラな組織や不完全な組織となります。結果、組織全体の力は小さくなってしまいます。
すでに組織の目的・方法・役割が明確になっている会社は、次にそれらが連動しているかをチェックしてみてください。

(3)目的・方法・役割を理解・浸透させる
これは主に、共同体段階~公式化段階で注意したいポイントです。組織が小さい段階では社長と現場社員の距離が近いため、コミュニケーションが取りやすいため、問題は生じにくいです。
しかし、社員が増え組織が縦に大きくなると、社長と現場社員の距離は遠くなるため、経営理念に込めた社長の想いや新たな経営戦略・経営計画の背景などは、組織全体に伝わりづらくなります。
そのため、組織化フェーズの最終段階では、目的・方法・役割を理解・浸透させるための会議や面談、教育の場を設定・運用していく必要があります。
主なポイントは下記の通りです。

ここまで説明してきた通り、組織化を進める上で大事なポイントは、必要な要素である目的(経営理念)・方法(経営戦略)・役割(組織構造、人事戦略)を「明確にする」「連動させる」「理解・浸透させる」の3つです。
では、以上を踏まえた上で、実際に組織化・組織作りを行っていくステップを次に明示します。
3、組織化のフェーズ
組織化を行っていく際、基本的には下図の通り8つのフェーズを踏んでいきます。
フェーズ6~8のところは、組織の状況を見ながら実行していきます。

ぜひ、上図や前述の「組織のライフサイクルモデル」を参考にしながら自社の現時点での段階や課題の把握につなげてみてください。
4、まとめ
この記事では、組織化・組織作りについて解説してきました。
組織とは社会への価値提供をより大きくするために形成されるものであり、目的(経営理念)・方法(経営戦略)・役割(組織構造、人事戦略)の要素が必要です。
また、組織化を進める上では、必要な要素を「明確にする」「連動させる」「理解・浸透させる」の3つが大事なポイントとなります。
組織化・組織作りはすぐにできるものではなく、時間をかけて行っていくものです。しかも、一度やったら終わりではなく、自社の外部・内部環境変化に応じて随時見直していくべきものです。
簡単ではありませんが、組織化がうまくいくと会社の方向性と従業員の方向性が合致し、従業員のモチベーションが向上します。
それにより従業員が積極的に行動・コミュニケーションを取るようになり組織が活性化、効率的な組織運営が可能になります。
そして組織全体の成果(社会への価値提供)も変わってきます。
少しずつでも継続的に取り組んでいきましょう。